愛・地球博記念公園 自動運転バス

愛知県は全国に先駆けて2016年度から自動運転の実証実験を実施しています。そのノウハウを積み重ねることで、5G・遠隔監視・路車間協調などを活用した自動走行の技術ノウハウを充実させ、自動運転によるビジネスモデルの構築を進めています。

2022年度は社会実装に向けた取り組みをさらに深化させて、交通事業者などが実運行で再現できるビジネスモデルの構築を目指してきました。これを受けた実証実験の一環として、長久手市にある愛・地球博記念公園で、「園内バスルートでの自動運転バスによる運行」をテーマに、公園利用者などの移動手段を想定した実証実験を2月10日から12日まで、及び2月14日の計4日間行いました。

この実証実験はNTTコミュニケーションズを幹事会社とし、NTTドコモやアイサンテクノロジー、埼玉工業大学などが参加して行われたもので、大型バスによる自動走行を初めて実施するだけでなく、AI映像解析技術を活用して、園内の歩行者に対して音声によるバスの接近の注意喚起を行うのも今回の特徴となります。さらに、複数のカメラ映像を5Gによって伝送することで、遠隔管制者がルート上の危険を検知して、遠隔管制室と車両との間でコミュニケーションを取ることで、事故などを防ぎます。そのほかにも、車両と歩行者の動きについてシミュレーションを行って、自動運転バスと歩行者の安心で安全な共存を検証することで、将来の園内における自動運転サービスの実装を目指すとしています。

●実証実験の特徴

(1) 愛・地球博記念公園で大型バスによる自動走行を初めて実施

愛・地球博記念公園で、大型バス(現在運行中の園内バスと同型)による自動走行を初めて実施。実証実験では交通事業者が運行を担当して、自動運転バス車内外の安全や運行面での課題抽出を行い、安心・安全な運行方法の確立を目指しています。

(2) 歩車混在環境におけるAI映像解析技術を活用した注意喚起

多数の歩行者による往来が見込まれる北1駐車場付近の走行ルート上では、AI映像解析技術によって周辺の歩行者の状況を分析して、自動運転バスの接近時に路側に設置したスピーカーから音声にて注意喚起を行って、歩行者と自動運転バスの安心・安全な共存について検証を行いました。

(3) 5Gを活用した危険箇所リスクの検出

走行ルート上や車両内外に設置した複数のカメラ(路側/車載カメラ)を5Gなどに接続して、運行状況を鮮明な映像によって遠隔管制室で監視することで、遠隔管制室と車両との間でコミュニケーションを取って事故などを防ぎます。
車載カメラには株式会社東海理化の提供する画像処理システムを活用することで、遠隔監視の複数画像を統合して、車両周囲の死角が少ない映像を伝送することで、遠隔管制者の負荷を軽減します。道路側カメラは、車両から死角になる場所や子供を含めた歩行者の移動が多い危険箇所に設置して有効性を分析し、将来の園内での自動運転サービスの実装に向け活用できるようにするとしています。

道路側のカメラにはエンワの提供する映像伝送システム「ディーキャスター」を採用することで、専用の機材を用意することなく、スマートフォンにて高精細な映像を低遅延で伝送しました。

(4)車両と歩行者の動きに関するデジタル空間上でのシミュレーション(参考実証)

歩行者の自動運転車両に対する危険認知感覚に対応した回避行動をAIでデジタル空間上に再現して、歩行者が危険を感じない自動運転車両の走行速度・経路等を導き出すことのできるシミュレーションシステムの構築を目指しました。

車両と歩行者の動きに関するシミュレーションイメージ

具体的には、複数の走行パターンを収録した動画を被験者が視聴して、車両に対する「安全、危ない」といった危険認知感覚をAIにより数値化することで、対応する歩行者の回避行動をパターン化。そして、歩行者の往来が多く見込まれる交通環境をデジタル空間上に再現し、想定される歩行者の動きをシミュレーションします。今回の実証実験では、デジタル空間で想定した歩行者の動きと実際の歩行者の動きを比較することで、シミュレーション自体の有効性を検証しました。