
自動運転は公道上の物流だけでなく、人手不足や作業の効率化などを目的とした、限られた範囲での活用も期待されています。川崎重工では工場内での物流を無人化するために開発した多用途UGVによる無人物資輸送の実証実験に成功しました。UGVとはMulti-use Unmanned Ground Vehicleの略で、多用途無人地上車両となります。
今回の実験では明石工場のモーターサイクル製造ラインで、従来から有人によってトラックで行っている工場内のエンジン運搬をUGVに置き換えることが可能かが検証されました。

具体的には2022年3月に明石工場で実施され、UGVに1回あたり15台のエンジンを積載し、エンジン工場から300mほど離れたモーターサイクル組立工場まで、無人自律走行により搬送しました。これによって、UGVの活用をすることで従来からのエンジン運搬業務の効率化が期待されます。
使用されたUGVも川崎重工が開発したもので、主な特徴は下記となります。
- 高い走行性能を誇るカワサキモータース製のオフロード四輪車両”MULETM”に、無人自律走行用のシステムを搭載
- レール等を必要としない無軌道走行のため、工場に導入する場合は追加設備が不要で、狭い通路でも自動走行が可能
- 走行ルートの変更を容易に行うことができ、製造状況に応じた行先の変更や製造ラインの変更にも柔軟に対応可能
実験に使用した車体はパワーユニットにモーターを採用して、工場内走行を行うため足まわりはオンロードスタイルとし、車上設備はエンジンの輸送に最適なキャリアを装備しています。充電環境の確保が難しい場所や、未舗装路での走行には、エンジンを搭載したオフロードスタイルを選択することもできるなど、使用する環境に合わせて車体のカスタムすることが可能なのも、川崎重工自製のメリットです。
<カスタマイズ可能な機能>
- パワーユニット: エンジンもしくはモーター
- 足回り: “MULETM”の強みを活かした未舗装路で走行可能なオフロードスタイルもしくは舗装路走行向けのオンロードスタイル
- 車上設備: 人の乗車を目的としたシートスタイルもしくは搬送物に合わせたキャリアスタイルなど
川崎重工はグループビジョン2030を掲げて、注力フィールドを「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」としています。多用途のUGVは「近未来モビリティ」の一環として開発を進めているもので、実験で得られた知見をもとに、物流にかかわる人手不足の解消や業務効率化のため、多用途UGVをはじめとする自律運転を用いた無人輸送システムの開発に取り組み、さまざまな社会課題の解決に貢献するとしています。