
トヨタをはじめ、ウーバーやエアバスなど、様々な分野の企業が開発を行っているのが「空飛ぶクルマ」です。最終的には、自動車として走りつつ、必要に応じて飛行ができ、すべてにおいて自動運転での制御となるとされています。空を飛ぶことで、路上での渋滞が避けられたり、移動時間がセーブできるなどのメリットが挙げられます。
すでに日本でもスカイドライブが2020年に有人での飛行試験に成功していますが、2021年6月28日にスロバキアのクレインビジョン(Klein Vision)という企業が自社開発した「エアカー」の飛行試験を実施して、見事成功しました。注目すべきはスロバキアの都市ニトラから、首都ブラチスラバまでの約70kmを35分かけて飛行したことで、都市間での飛行成功は世界で初めてのことです。
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運転したのはCEOでCTO(最高技術責任者)でもあるステファン・クレイン氏で、リリースによれば20年以上、空飛ぶクルマの研究開発を続けてきたとのことで、初の試験飛行に成功したのは2019年10月のことで、大小すべての試験飛行を合わせると、今回の都市間での試験が142回目の着陸成功になるとのことです。
クレイン氏はスロバキア工科大学を卒業したあと、デザインを学び、その後、スロバキアの美術大学で学科長を務めつつ、アウディやVW、BMWとの共同ブロジェクトを行ったり、自動車飛行に特化した企業の設立に関わるなどし、2017年に現在のクラインビジョンを設立。研究を進めて特許を取得しつつ、「エアカー」を完成させました。「エアカー」の源流は、1989年の大学での学位論文にあるとしています。
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このクレインビジョンの「エアカー」の特徴は、他社の開発中のものと比べると通常の自動車に近いという点にあります。従来、いくつかのプロトタイプがイベントなどで発表されていますが、大型ドローンに車輪が付いているといったものがほとんどです。
「エアカー」は普段は自動車そのもの形で、もちろん実際に地上を走ることが可能ですが、スイッチひとつで羽根を出すことができ、そのまま飛び立つことができます。ちなみに羽根の作動はたった3分で完了するとのこと。まさに水陸両用車ならぬ、空陸両用車と言っていいものです。
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今回の実験に使用されたプロトタイプ1の動力は160馬力を発生するBMW製のエンジンで、約2500mの高度まで上昇して、速度は190km/hを記録しました。今後はプロトタイプ2の製作も予定されていて、同じBMW製エンジンを搭載して、300馬力にまで出力を高め、時速は300km/h、航続距離は1000kmになる予定としています。今後の実験だけでなく、他社の動向についても注目です。