日立Astemoが開発したダイナミクス・プランニングのアルゴリズムは、自動運転や先進運転支援技術によって走行している際に、前後左右の不快な揺れや加速度を抑制するもので、その結果、快適な移動空間を実現することができる技術です。AD ECU(自動運転用電子制御ユニット)などにおける高精度な軌道計画技術となります。
自動運転技術の開発では、車両を安全に目的地まで航行させるためのシステム構築が必要となります。そのレベルが上がるに従って、当然、ドライバーは運転操作から解放されて、様々な過ごし方ができることから、車室内の快適さはとくに重要な要素となります。
現在の一般的な先進運転支援技術では、車線に合わせて中央寄りの経路を一定速度で走行するため、左右の不快な揺れや、前後の極端な加速度が発生する場合がありました。これらはもちろん、車内の快適性を損なう原因になることから、乗り物酔いなどを引き起こしやすくする可能性があります。
例えば、運転が上手いとされるドライバーはカーブを曲がる際に、車線内を有効に利用して緩やかな軌道を描いたり、軌道の曲がり具合や進入速度に応じて、スピードを適切にコントロールしたりします。そうすることで、走行により生じる前後左右の不快な揺れや加速度が小さく滑らかになって、結果的に快適なドライブにつながります。
今回、日立Astemoが開発したダイナミクス・プランニングは、自動運転や先進運転支援技術による走行でも、熟練ドライバーのように車室内を快適に保って走行する軌道と速度を実現するためのアルゴリズムとなっています。
ダイナミクス・プランニングでは、カメラなどの外界認識センサー、MPU(Map Position Unit)による地図情報や、将来的にはインフラからの交通情報などを活用して、車両前方の走行可能領域をAD ECUなどに入力します。
その結果によって走行可能領域の幅を有効に利用して、車両にかかる加速度や加速度の変化を抑えることができる走行軌道と、その軌道に沿い走行した際に生じる加速度が小さく、かつ緩やかになるようなスピードを計画します。その結果、ベテランドライバーのように滑らかな運転を可能になります。
このような軌道計画をする場合、従来の手法では車両の重量や車長などの車両諸元を用いて複雑な計算を行っていました。そのため、AD ECUなどにおいて高い演算能力が必要となるという課題や、強い風の力や路面の凹凸などによる意図しない外乱要素があると車両が快適に走らない場合があるという課題がありました。
日立Astemoの技術では、車両諸元や外乱要素に対する対応を独自の車両制御技術で担うことによって、車両諸元を使わないシンプルな軌道計画を可能とするアルゴリズムであるダイナミクス・プランニングを開発している点が注目です。