三菱電機は、MaaSの社会実装に向けたオンデマンド運行管制の実証実験を同社の神戸製作所内で2021年3月22日から29日まで行っています。この実証実験では、製作所内で運行する自動走行車両の運行ダイヤや運行ルートを、乗車申込の状況に応じて、リアルタイムかつ柔軟に変更する全自動の運行管制技術の確立を目的としています。さらに、車両運行業務の省力化と利用者の利便性向上を両立させる交通サービスの実現を目指すとしています。

具体的には、全長約1.5kmのルートに、停留所を5カ所設置して、その中で自動走行車両への運行指示や、停留所端末への配車情報配信を全自動で実現する運行管制システムを実証します。停留所端末からの乗車申込情報に合わせて、以下4つの運行モード を柔軟に切り替えます。

  1. 通常運行:指定ダイヤに基づき全停留所を巡回
  2. スルー運行:乗降客がいない停留所を停車せずに通過
  3. 迂回・近道運行:乗降客がいない際、次の停留所まで最短ルートで通行
  4. 増便・減便運行:乗車申込の件数に応じた増減便
三菱電機 実証実験フィールドの模式図

注目すべき点としては、まず、複数車両への配車、運行指示、停留所端末への配車情報配信の自動化で、運行業務の省力化を実現することです。管制員・運転員を必要としない運行を実現します。

三菱電機 実証実験システム図

さらに状況変化に応じたリアルタイムオンデマンド運行管制で、利用者の利便性を向上する点にも注目です。路線バスのような運行・利用形態の交通サービスに対して、乗車申込数や目的地などの状況に応じた運行便数の増減や運行ルートの柔軟な変更をリアルタイムに実施できるようにすることで、待ち時間や移動時間を短縮し、利用者の利便性を向上させます。

今回の実験の背景にはMaaSの要であるオンデマンド交通サービスでは、利用者の需要に応じた配車や運行ルートの最適化が重要となりますが、実際の運行管理はオぺレーターが行う例が大半で、運行業務の省力化との両立が課題となっているということがあります。

三菱電機では本実証実験で得られた成果に対して、これまで培ってきたシミュレーション技術や予測技術を組み合わせることで、運行管制業務の自動化と運行効率最適化の技術を確立。さらに、リゾート施設や公園など、大規模施設の敷地内での実証実験を進め、様々な運行形態や移動ニーズに対応したオンデマンド交通サービス事業の早期社会実装を目指すとしています。