自動運転の進化、そして実現にはシミュレーション技術は欠かせません。実証試験を行うにしても、あくまでもシミュレーションなどである程度の試験を繰り返した結果でのもの。実施には危険が伴う可能性があるだけでなく、再現性などの点でシミュレーションでの試験や実証は利点があるとされています。

第3回となる名古屋オートモーティブワールド2020の会場で目を引いたのが、コーポレートカラーの紫を使ったiPX社のブース。中央には小さなラジコンがコース内を走っていてひと際注目を集めていました。

名古屋オートモーティブワールド2020 iPX社ブース

一見すると自動運転となにが関係あるのかわかりませんが、これは「強化/逆強化学習」のデモンストレーションとのこと。強化学習とは、人間によって与えられた報酬関数によって試行錯誤を繰り返すことで、次第に最適な方法を見つけ出すというもの。そして逆強化学習は対象となる行動サンプルから、最適な方法や報酬を逆算するもので、まったく逆のルートをたどるものです。

会場内のラジコンは、この逆強化学習のデモンストレーションを行っていたもので、横断歩道を渡っている人形を避けて通るにはどういうルートを取ればいいのかを、まず走る・止まる・曲がるという各制御を外の世界の状況を見ながら逆強化学習していきます。

名古屋オートモーティブワールド2020 iPX社 自動走行実演風景

車体自体はMPCと呼ばれる、最適化制御によって、ステアリングやアクセルの量を外の世界からの情報をもとに常に演算しながら、最適化していきます。

最終的には人間の運転に近い状態へと制御は進化していくとのことで、会場で走っていたラジコンも会期中にスムーズに歩行者を避けて進むことができるようになるとのことでした。

開発では、実車を使って同様のことを使って行うことは非常に危険が伴いますが、実際は今回のラジコンの部分はシミュレーションが担当するとのことでした。

またADAS機能の開発に有効なものとして、AIドライバーモデルについての紹介もされていました。これはAI技術を使用した運転者/車両/環境による運転特性の変化を再現した仮想的な複数のAIドライバーモデルを構築するもので、シミュレーションと組み合わせることで、バーチャルでのドライバーモデル作成キットの実現を目標としているのことでした。なお、iPX社ではデータ取り実験車両を保有していて各種試験を行っていて、そのデータは無償でホームページからダウンロードすることができます。

名古屋オートモーティブワールド2020 iPX社 AIドライバーモデル パネル

そのほか、ビッグデータ化された走行中の画像データから、ラベリングをすることなく、類似画像を抽出する技術や、倉庫管理の最適化を行うシステムなど、自動運転技術を支えるさまざまなシミュレーション技術などがわかりやすく展示されていました。

■ iPX ホームページ
https://www.ipx.co.jp/