
自動運転時だけでなく、現状の交通においても問題になるのが、ほかの車両だけでなく、歩行者や自転車などの存在です。飛び出しや死角部分での発見の遅れなど、突然かつ難しい判断を迫られることがあります。そのため、様々なセンサーなどが開発され、車両などに装着されていますが、ドイツでは新しい発想に基づいて、MEC-View研究プロジェクトが実証実験を行っています。
MEC-View研究プロジェクトはボッシュが共同体リーダーを務めるもので、メルセデス・ベンツ、ノキア、オスラムなどの企業に加えて、デュースブルグ=エッセン大学、ウルム大学とも協力しています。またドイツ経済エネルギー省から550万ユーロの支援も受けています。
このプロジェクトが発想したのが、従来からある街灯にセンサーを組み込むことです。街路灯は6メートルもあるため、車載とした場合よりも、より広い確認可能範囲を実現します。そして、この街路灯からの情報は5G回線を使用して、リアルタイムで転送。その転送先はモバイルエッジコンピューティングサーバー(MECサーバー)と呼ばれる特殊なコンピュータで、車両に装着されたセンサーからのデータ、高精度デジタルマップと統合します。それを各車両に転送するだけでなく、将来的には都市交通管制センターのような施設にサーバーを導入すれば、メーカーに関わらず、すべての道路利用者と情報共有が可能になります。またほかの研究プロジェクトへの活用も期待されます。
すでにドイツのウルム市では、3年前から実証実験が行われていて、設置されている街灯にセンサーを組み込み、見通しの悪い交差点での自動運転車両の支援を実施してきました。自動運転のテスト車両が適切な走行モードに切り替え、スムーズに側道から本道に合流することに成功しています。今後はここで得られた成果をもとに、自動車機器テクノロジーや自動運転、モバイル通信技術の進化・開発が進められるとのことです。また、街路灯などのインフラは、ほかの研究プロジェクトに活用することも可能となっています。