トヨタの豊田章男社長とNTTの澤田純社長
トヨタの豊田章男社長とNTTの澤田純社長

自動車だけにとどまらず、異業種とも提携を積極的に行っているトヨタ。NTTと資本提携するというニュースが、駆け巡りました。その規模もお互いに2000億円を出資して株を持ち合うというもので、本気度はかなり高いものです。トヨタとNTTという、各業界を代表する会社同士の資本提携の背景にはなにがあるのでしょうか。

実はトヨタは3つある大手通信会社のすべてと関係があり、ソフトバンクと2018年にMaaSに特化した新会社「モネ・テクノロジーズ」を設立していますし、KDDIの母体となったIDOの設立に関わっていて、現在もKDDIの大株主となっています。NTTとも2017年に「コネクティッドカー」の分野で提携していて、通信を中心とした様々な実験を行っています。

通信業界で今、大いに話題になっているのが5Gです。高速・大容量、低遅延など、今までよりも飛躍的に向上するものとして、サービスが開始されたばかりです。さらに2030年頃には、次の6Gが実用化されるとも言われているだけに、トヨタとNTT、さらにほかの通信会社との提携は意味があるのは確実です。

ただ、トヨタを中心として見た場合、八方美人的な提携が許されるのかという点は気になります。よく見てみると、実際は少しずつ分野が異なっていて、まったく同じことにおいて提携しているのではないことに気が付きます。この点はとくにトラブルはなく、実際に今回のトヨタとNTTの資本提携を受けて、ソフトバンクが提携解消ということもありません。豊田章男氏と孫正義氏はイベントなどに一緒に登場して、次世代への夢を熱く語っていましたが、その思いは今でも変わらないでしょう。

今回の資本提携の理由は、通信環境のさらなる向上を受けての協業という、ある意味、表向きの理由だけではありません。大きな目的は、スマートシティの実現にあると見られています。スマートシティには様々なスタイルがありますが、国土交通省では「都市が抱える諸問題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画・整備・管理・運営)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義しています。この要となるのが高速通信ネットワークやビッグデータの活用ですし、さらにNTTは傘下にNTT都市開発をもつことで、不動産開発にも長けています。

NTTはすでにアメリカのラスベガスで、2年前からスマートシティの実証実験を行うなど、かなり積極的に展開しています。コネクテッドカーからの情報も重要になるだけに、日本でスマートシティを作るにはどこと組むのか? トヨタとNTTの目指す方向が合致していると考えると、今回の資本提携は自然な流れと言ってもいいのではないでしょうか。