
自動運転化がもたらす恩恵というのは、我々が楽に移動するということだけにとどまりません。現状でも、過疎地での高齢者の移動システムへの利用、実用化を目指して、各地で実証実験が行われているのは、本サイトでもレポートしています。自動運転化、つまり人手が不要という点だけで見ても、今日本が直面している諸問題に対して、解消に向けての有効な手段となっているのは確実です。
そのひとつが農業です。従事者の高齢化や後継者不足、休耕地の増加など、多くの問題を抱えているのは、皆さんもご存知の通りだと思います。では、農業において、自動運転化というのは有効なのか。さらにはどういった具体像があるのでしょうか。
クボタはすでに自動運転トラクターを展開
実はクボタがすでに明示してくれています。つまり自動運転のトラクターというわけです。すでに2017年に、クボタは試験的に発売し、2018年には本格的なリリースを開始しました。これは国内メーカーでは初となります。
発売第1弾となったのはトラクターで、GPSによる位置情報に基づき、まずは圃場全体のマップを作成します。この作業は手動ですが、一度できてしまえば、あとはスイッチひとつで作業を行い、移動していきます。

制御はなんと数センチ単位の精度で、効率を計算しながら、トラクターは進んで行きます。自動車のようにセンターラインや標識など、目印となるものがないところで自動運転を行うのは高度な制御が必要になるとのこと。障害物があれば自動で停止して、作業者(今のところは監視が必要)の許可があるまで、動くことはありません。



2020年10月には自動運転田植機もラインアップに追加
一方、田植機では重なる部分ができると効率が落ちてしまいますし、田んぼとして成り立たなくなるので、自動計算されたマップに基づいて事前に何列植えるかを計算します。あとは真っ直ぐに自動で植えていくだけ。この真っ直ぐというのが熟練しないとできないことなのですが、もちろん自動運転であれば難なくこなしてくれます。


自動車の場合は道路に沿って上手に走って止まり、曲がるというなかでの制御を行いますが、圃場というかなり曖昧な場所で、効率よく自動で作業するというのは、新たなる可能性を明示してくれたように思います。
これまでGPS搭載農機「ファームパイロット(Farm Pilot)」シリーズとして、トラクター、コンバインを発売しており、2020年10月には自動運転が可能な田植機「アグリロボ田植機NW8SA」(税抜き価格は、無人仕様:625万円/有人仕様575万円)を発売すると、1月に発表しています。
農業従事者の高齢化、後継者不足だけでなく、熟練者と同様の技術を初心者でも簡単に得られるのは大きなメリットとなるはずです。
クボタが描く未来の農業
さらにクボタは2020年1月、自動運転、AI、IoTを駆使した130年後の農業の姿を提示して、見るものを驚かせました。その核となるのは「X tractor」で、トラクターと呼んでいますが、運転席も操縦装置も見当たりません。このX tractorは完全自動で作業を行うだけでなく、天気データの収集やドローンに指示を出して圃場マップを策定するなど、作業プランの策定することまで1台で行います。実際の農場経営者はスマートフォンに送られてくる各データを確認し、承認を出すだけです。


これにより、人手不足の解消はもちろんのこと、高度に効率化された農業を実現できるようになることを目指しています。クボタが目指す「Social Agri」への想いが「X tractor」のX(クロス)には込められています。