
安全な自動車をドライバーが選択できるようにつくられた「自動車アセスメント」の試験環境が進化している。一般財団法人日本自動車研究所(Japan Automobile Research Institute=JARI)は、運転支援技術の研究・開発の基盤となる、新しい「先進運転支援システム試験場(城里テストセンター:茨城県城里町)」を公開した。
世界各国のNCAPとJARIの役割
自動車アセスメント(New Car Assessment Program =NCAP)は、私たち一般ドライバーにとっても身近なものだ。たとえば、クルマのカタログには、衝突安全性能、予防安全性能の評価や、「Euro NCAP総合5つ星を獲得」などといったような記載があったりする。
評価項目や試験方法は、国ごとに異なる。交通事業や交通事故発生状況が違うからだ。
国内では、国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA、ナスバ)によるJNCAPが実施されており、JARIは受託事業として試験法の提案や試験の実施を行ってきた。
予防安全技術の評価が重要に

2010年代から、自動車のカメラやミリ波レーダーなどで先行車や歩行者などとの距離を検知して、衝突しそうになると警告したり、衝突前に速度を低下させる衝突被害軽減ブレーキなどの予防安全技術が普及しはじめ、国内では軽自動車にも標準装備されるようになった。そこで、NCAPにもこのようなシステムの安全性評価が取り入れられるようになった。

2014年度から、JNCAPにおいて新たな予防安全性能アセスメント試験として、衝突被害軽減制動制御装置と車線逸脱警報装置のふたつの装置についてのアセスメントが開始された。JARIは国内外の動きに合わせて2016年、城里テストセンターに予防安全性能アセスメント試験の実施場所として第2総合試験路(全長502m最大幅員40m)を建設した。
なぜ新しい試験場が必要になったのか。JARIの鎌田実代表理事・研究所長によると、新設されたADAS試験場は、これから予防安全性能評価の衝突被害軽減ブレーキに「交差点」での評価試験項目(交差点試験)が追加される動きへの対応なのだそうだ。
これまで予防安全性能評価の衝突被害軽減ブレーキには、対車両、対歩行者、対自転車の評価項目があり、直線的なコースでの前方対象物に対する認識評価試験が中心となっていた。今後は、交差点試験が加わる。海外では一足先に、テストセンターにおいて幅員を拡幅する動きがある。そこで今回公開された「ADAS試験場」が2019年より新たに作られ、2022年7月から運用が開始となった。ADAS試験場のスペックは、縦500m、横300mで、時速60km対80kmまで出会い頭事故ケースなどを模擬した交差点試験が可能という。
自動車の高度化とともに試験モードも高度化
国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏は「自動車アセスメント関連企業がこれだけたくさんあることに驚いた。ハンドルまで自動で動く時代になってきており、試験モードも高度化していく流れがある。ダミーを使って、想定できるありとあらゆるターゲットをつくって、リアルな世界で評価する必要がある」と話した。