5月14日(土)、「第2回KYOTO楽Mobiコンテスト」の第1回事前イベントがオンライン形式で開催されました。100万都市としての顔と観光都市としての顔が混在する京都市ならではの課題を、応募されたアプリやアイデアで解決に導くのが目的。2020年に行われた第1回では注目に値する応募作品が賞に選出され、関係者から高い評価を受けました。
2022年のコンテスト募集は4月25日にスタート。今回の第1回事前イベントはすでにエントリーを決めた人、もしくは参加を検討している人のために行われたもので、テーマは「京都の課題を深堀しよう!」。京都市や京都市交通局、京都市観光協会の担当者などが登壇し「京都の解決が期待される課題」についての発表を行ったほか、MD communetから提供される京都市の各種データについて事務局から説明が行われ、質疑応答の時間も設けられました。
登壇者は異口同音に移動の分散と観光地での混雑緩和を訴える
第1回事前イベントは3部構成となっており、事務局による説明(第1部)の後、第2部「京都の課題を深堀しよう!」がスタート。交通地理学が専門の、龍谷大学 井上学教授が基調講演を行いました。
井上教授は生活と観光が空間的に混在する京都市ならではの地域特性により、生活の場と観光消費の場を区分できていないと指摘。住民と観光客により、バスや鉄道はつねに混雑。さらに駐車場探しのクルマ利用者や客待ちのタクシーにより、道路の渋滞も発生していますが、目的地に向かう経路は複数存在するので、リアルタイムデータを活用したルート情報を発信すれば、人の分散は可能と訴えました。
続いて京都市交通局。京都市内での観光のコツは、市バスと地下鉄を併用して混雑や移動時間の短縮であるものの、担当者からは市バスのみの移動を選択してしまう人が多いと指摘。地下鉄・バス1日券も存在しますが、券の存在を知らずに京都駅で市バスの1日券を購入する人も多く、情報発信の在り方に課題があると語りました。また、観光地付近のバス停から京都駅行の市バスは非常に混雑していますが、京都駅もしくは付近のバス停に停車し、別の目的地に向かうバスは比較的空いているという問題も。市バスと地下鉄は、現在コロナ禍により利用者数が減少しており、利用者の回復、事業効率の改善につながるような提案がありがたいと結びました。
京都市観光協会は観光客と地元住民との課題についてプレゼンテーションを実施。観光地に近い一部地域では、観光客による混雑と住民の不満が発生しており、京都市観光協会では課題を4つ(混雑、違法民泊、マナー問題、限定的な経済効果)に分類し、各種情報発信や条例の整備、マナーからモラルへの展開(京都観光モラル)など、改善に取り組んできましたが、課題は現在も進行中。中でも混雑緩和に関しては、オンラインでの事前予約制度を導入したものの、高齢者を中心にさまざまな意見があり、歯がゆい思いをしているとのこと。混雑を避けることができ、誰でも使えるアプリやアイデアの提案を期待したいと語りました。
なお、京都市観光協会のプレゼンテーション終盤には、観光サービス産業の新たな価値創造に向けて、京都市観光協会と協働している京都信用金庫の担当者が出席。京都のさまざまな社会課題解決に向けた取り組みを支援する施設「QUESTION(京都市中京区)」の紹介が行われ、一助になればと語りました。
続いて矢崎エナジーシステムによる京都の物流についてのプレゼンテーション。物流事業者の悩みは渋滞であり、結果として配送時間の増加や人手不足、働き方改革の遅延につながっていると指摘。洛外の特定の目的地からのバスとトラックの流入ルートや洛外の移動ルート、さらに時間帯別のリアルタイム渋滞データなど、提供する多くのデータを活用して、渋滞発生時の別のルート検索など、様々なアプリやアイデアを考えてほしいと伝えました。
最後に京都市都市計画局歩くまち京都推進室の担当者が登壇。京都駅来訪者のビッグデータを分析したところ、市民と市外居住者、外国人を含む観光客のピークが同時間帯であったことを例にあげ、分散の必要を強調。下記の課題を提起し「市民の皆さま、観光客の皆さまが、バスや鉄道を利用して安心・安全、快適に移動ができる環境、『歩くまち・京都』のまちづくりに寄与してほしい」と訴え、第2部を締めくくりました。
●京都市が提起した課題
1.少子高齢化、バス運転手の担い手不足、コロナによる大幅な利用減
2.「密」回避や、観光需要の回復に伴う車内混雑への対応
3.路上での荷卸し事例が多数。実態の見える化と把握に課題
提供されるデータの説明、質疑応答も白熱
第3部は「第2回KYOTO楽Mobiコンテスト」で提供される各種データについての説明。5月30日以降、SIP自動運転が提供するカタログサイトMD communetからダウンロード可能(コンテストへのエントリーが必要)となり、コンテスト参加者はこれらのデータをもとにアプリ開発やアイデア検討を実施することになります。2020年の第1回コンテストからとくに拡充されたのは、公共交通の動的データや物流データ。ターゲットを広げたことで提供されるデータのラインアップは随時更新されるため、最新情報を確認してほしい旨もアナウンスされました。
MD communetの説明(NTTデータ)が終わると質疑応答が始まり、第1回事前イベントは終了。質疑応答では、事前イベント以外に参加者の検討に資するイベントがあるかという質問があり、事務局がエントリーの有無を問わず、メンタリング(相談会)を実施すると回答。プレゼンテーションの内容からデータの詳細、技術的な相談まで、事務局がバックアップしてくれるのは心強い。我こそはと考えている人はぜひエントリーして、京都の課題解決に挑戦してはいかがでしょう。
第2回 KYOTO楽Mobiコンテスト
申し込みはこちら https://web.contest.adus-arch.com/entry/
なお、6月18日には第2回事前イベント「アイデア創発イベント(京都編)」も開催されます。慶應義塾大学大学院SDK研究科 広瀬毅特任助教を迎え、デザイン思考を学びながら、様々なデータを掛け合わせて京都市の抱える課題を解決する新しいサービスアイデアを考えます。アイデアを作りやすくなるようないい問いの立て方を体験できるとのこと。こちらもコンテストのエントリー有無にかかわらず参加できるため、気軽に参加してほしい、と事務局は呼びかけています。
第2回事前イベント「アイデア創発イベント(京都編)」2022年6月18日(土)10:00~
申し込みはこちら https://web.contest.adus-arch.com/#top-event-area