オンラインインタビューの前編に続いて、日本自動車工業会 自動運転検討会の主査・横山利夫さんに、自動運転の実用化に向けた方策や、次なるシナリオ、社会的受容性についての取り組みについて、お話を伺いました。

日本自動車工業会(略称:自工会/JAMA): 1967年に前身である自動車工業会と日本小型自動車工業会との合併により、乗用車、トラック、バス、二輪車など国内において自動車を生産するメーカーを会員として設立され、自動車メーカー14社によって構成。2002年5月には自動車工業振興会、自動車産業経営者連盟と統合、2010年4月には社団法人から一般社団法人へ移行し、現在に至っています。

横山さんは国土交通省の保安基準だけではなくて、警察庁のドライバーのルール、道路交通法の委員会にも、日本自動車工業会(以下、自工会)自動運転検討委員会の主査として参加していると思います。日本は、クルマの基準とドライバーのルールとふたつあると思いますが、そのふたつを含めて、令和2年の4月1日からレベル3を可能とする新しい法律が施行されています。けれども、まだ実際にものが出てない。制度だけが先に進んだという、非常に世界を見渡しても、日本の制度はかなり……規制緩和という言い方はよくないと思うんですけど、自動運転をベースにした新しい法体系ができたということで、これはヨーロッパから見ても日本はすごい進んだなというふうに、言われると思うんですけども。このへんの状況を、どういうふうに横山さんはご覧になっていますか。
ヨーロッパと比べて、一般のメディアの中には、日本は規制が厳しいだろうっていう方がいるんですけどでも、それは正しくなくて、日本が一番今、法整備という段階では一番ドアが開いたというか、進んでいるように思いますけども、いかがでしょうか。

横山:自動運転を実用化するにあたっての、法整備という観点では、日本はすごくうまくいった例ではないかなというふうに、私は感じています。
官民学が連携したさまざまな会議体があるわけですけども、その中でいつ頃どういった自動運転のシステムを実用化しようかという、まずターゲットが定まりました。
そのターゲットを実現するために、道路運送車両法と道路交通法をいつまでに整備しなければいけないかという、制度整備大綱がまず定められまして、その計画に沿って、今回の法規制が実施されたということで、自動運転技術の実用化のタイミングと法整備のタイミングがうまく同期して実現できたというのが、日本の例だと思います。 
自動運転の領域の法制化っていうのは、従来は世の中に商品が出てある程度実績が出てから法制化されてたんですけども、自動運転の領域はまだ世の中に商品が出る前に法規制をやるということが、従来の取り組みと違うところで、すごい大変だったことになります。

最後はその社会情勢といわれる、いわゆるまだ世の中にない自動運転の世界をこれから PRしていかなきゃいけないんですけども。その鍵を握ってるのは、十分な安全、先ほど how safe is safe enough、どのくらい安全にすれば十分なのかというところが、言葉では何かこう非常にアナログ的なんですけれども、それを実際におそらく数値目標あるいは確率論で、その科学的に数学的に求めているのかなと思いますけど。その作業は、今一番大変な時期なのでしょうか。

横山: how safe is safe enoughというのを、具体的にどうやって確認していくんだというのを、これは自工会の協調領域、重要な協調領域として取り組んでいますし、その活動を国際の場でも仲間も集めながら、現在推進しているという状況になります。
具体的にどんなやり方かといいますと、我々が実際経験している実際の交通環境の様々なデータを取りまして、リアルワールドで起こりうるシナリオというものを再構成します。そのシナリオに基づいて様々なクリティカルなシーンで、システムが適切な安全性を有しているかどうかということを、確認しています。
確認のやり方としては、シミュレーション環境上で行ったり専用のテストコースで確認をしたり、実際のリアルワールドの交通流の中で確認をしたり、ということで実際、どのような安全のレベルがきちっと担保されていれば、実際世の中で使っていただいて問題ないかということを、現在、様々なやり方で網羅的に、抜け漏れなく確認しているという状況になります。

おそらく自工会のチームとすれば、この自動運転検討会の皆さんはものすごい、各自動車メーカーの方々が、いま、必死になっていろいろ研究開発していると思うので。非常に多くの人たちが関わって、ひとつのプロジェクトを推進しているわけですね。

横山:自工会の自動運転検討会のメンバーは、様々なエキスパート性を持っている皆さんで構成をしています。例えば研究開発出身のメンバーであったり、認証法規の専門メンバーであったり、様々な渉外活動のエキスパートであったりということで、エキスパート性をうまくハーモナイズさせながら、自動運転検討会としての成果がより上がるような、そういった活動を現在推進しています。
まさに自動運転の実用化に関しては、スタートラインに立ったというタイミングだと思います。
これからステップ・バイ・ステップで、我々もその自動運転の技術を、より世の中の役に立つようにですね、日々努力していきたいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いします。

そうですね。横山さん、いろいろ今日はありがとうございました。