
滋賀県東近江市にある道の駅・奥永源寺渓流の里は、2015年秋に廃校になった中学校を改装して設立された、東近江市内2番目の道の駅。八風街道と呼ばれる国道421号沿いにあり、三重県と滋賀県を結ぶドライブルートの憩いの場になっているようです。また、ここからは鈴鹿山脈を望むことができ、観光や登山客も多く訪れるスポットです。この道の駅を拠点に11月15日から12月20日まで、自動運転サービスの長期実証実験が行われています。
実は奥永源寺渓流の里では2017年11月にも短期実験を実施していました。今回の実証実験は36日間の長期におよぶことから、運行システムやビジネスモデルの構築が大いに期待されます。

走行ルートは奥永源寺渓流の里〜黄和田町〜杠葉尾町を結ぶ片道約2.2km。集落や畑の間を通るこの区間は、道幅が狭く片道約1.7kmは一般車両と混在しますが、約500mは自動運転車両が優先的に走行できるように情報板などを設置して、注意喚起しています。

実験車両はヤマハ製ゴルフカーがベース。「路車連携型」という、路面に埋設された電磁誘導線からの磁力を感知して、既定のルートを走行するタイプ。なので、約2週間をかけて事前に電磁誘導線を通す工事を要したというのだから驚きです。
さあ、奥永源寺渓流の里を出発です。乗務員さんは地元の方々が持ちまわりで担当。とはいえ実証実験期間中は専任の方による指導付きです。駐車場から出るときなどはハンドル操作しますが、それ以外は、緊急時を除きハンドル操作はしません。走行中の様子は車内カメラから、道の駅内にいるオペレーターがモニタリングできるようになっています。この監視業務や予約の受付なども地元ボランティアの方ができる運行システムの確立を目標にしています。

ゴルフカートはバッテリーとモーターで走る電気自動車。スピードは自動運転走行時には最高で時速12km、手動時には時速20kmにも満たないのですが、車両の左右にはドアがないため思いのほかスピード感がある印象です。試乗時に一緒になったおばあさんは道の駅に野菜を納品に行った帰り道だそうで、原付バイクだと重いものを運ぶ際に運転しづらいので、自動運転サービスは便利で助かるとおっしゃっていました。そう、荷物が積めるトレーラーを牽引することもできるのです。

集落や畑を過ぎ、折り返し地点に近づくと、ちょうど紅葉シーズンだったこともあって絶景。周辺はキャンプサイトも点在していることから、地元の方のみならず、観光や登山で訪れた方にも活用してもらえるルート設定のようです。
当日は自動運転実証実験×東近江市イベントとして、「戦国きわんだーランド~ゆずり王の謎を解け!!」が開催されていたこともあり、試乗枠は終日ほぼいっぱいという状態で、多くの方が自動運転に触れることができました。
試乗を終えると、“1回の乗車料金はいくらだったら乗る?”というアンケートがありました。「100円」という回答が一番多かったのですが、地元の方だと「40円」「60円」という回答が。そう、前述のおばあさんのように、朝一で野菜を届けて一旦帰宅。再び夕方に道の駅まで行く人にしてみれば最低4回乗車することになるので、利用頻度の高い地域住民にしてみれば気軽に乗れる料金設定にしてほしいところかもしれません。生活の足か観光目的かによって、適正料金の感覚に隔たりがあるのは仕方ないでしょうけれど、今後の課題のひとつともいえそうです。

地域によって、様々な課題がありそうですが、道の駅・奥永源寺渓流の里には地元の高齢者の方も多く足を運んでいました。事業としての採算性や運行管理システムの構築、利便性の向上など、いくつもの項目について検証が行われることになりますが、この地域に合った自動運転サービスが長期にわたって実現する日が楽しみです。

滋賀県と三重県の県境近くに位置し、琵琶湖にそそぐ愛知川の源流が流れ、渓流釣りも楽しめます。閉校した中学校を再活用したというその外観も特徴のひとつ。市役所の出張所や、定期的に受診できる出張診療所、緊急時のヘリポートなども兼ね備えています。地域住民の買い物支援や災害時の安全・安心を支える拠点としての機能も担っています。
所在地●滋賀県東近江市蓼畑町510
営業時間●9:30〜17:30(12月から3月は16:30まで)
休館日●毎週火曜日※火曜日が祝祭日の場合は、翌日水曜日が定休日(GW・11月は休まず営業)、年末年始(12月29日~1月3日)
ホームページ●http://www.okueigenji-keiryunosato.com/
(文=編集部/写真=水川尚由)