
東京モーターショー会期中、自動車業界からの情報発信の一環として、いくつものシンポジウムが開催されています。社会的に関心の高いテーマを中心に、クルマを取り巻く多彩なテーマが取り上げられ、有識者の方々のさまざまな意見や見解を聞くことができます。自動運転、次世代モビリティ社会に興味のある方は、こうしたシンポジウムに参加してみるのもおススメです。
10月25日には東京都主催の「自動運転シンポジウム」が、自動運転がもたらす未来について考えることを目的として、各分野の専門家を招いて開催されました。

プログラムは2部構成で、第1部は、国際自動車ジャーナリストでSIP caféのマスター清水和夫氏による「自動運転がもたらすワクワクする社会」というテーマでの講演でスタート。続いて、東京都の前林一則氏は「自動運転に関する東京都の取り組みについて」、楠田悦子氏(モビリティジャーナリスト)は「より良い暮らしと社会のために〜MaaSや新モビリティサービスと自動運転の可能性〜、西村潤也氏(小田急電鉄)は「小田急グループが提案する新たなモビリティライフ」、西村明浩氏(ZMP)が「ZMP版自動運転MaaSの取り組み」。それぞれの立場や知見から、自動運転と社会との関わり方や、地域ごとに異なる公共交通の必要性や、高齢者の移動手段の確保といった課題など、これからの交通社会がどうあるべきかなどが語られました。

第2部では、教育評論家で法政大学名誉教授、尾木ママこと尾木直樹氏を加えてのパネルディスカッションが行われました。「自動運転は高齢者の移動をどう変えるのか」「自動運転が広げる未来の可能性」が主なテーマ。
冒頭、飛び出したのは尾木ママが最近になって運転免許証を自主返納した話。近年、運転技術の衰えを感じたこと、高齢者による事故のニュースが相次いだことなどから自主返納を決意したそうです。
「免許を返納したら喪失感があると思ったら、意外に開放感のほうが大きかったんですよ。運転経歴証明書ってご覧になったことありますか? これを提示すると、東京都の場合あちらこちらのホテルではレストランやバーラウンジで10%の割引きがあるんですよ。個人タクシーも割引きが。なんと、葬儀関係の会社でも割引きがあって、自分だけではなくて家族にも恩恵があるんですよ」と、そのメリットを紹介しつつ、会場の笑いを誘う場面も。

「交通事故の(加害者になる)リスクからも解放されました。東京に住んでいると公共交通機関が発達しているので、ほとんど不便を感じることはありませんね」と、高齢者の運転免許証自主返納も選択肢のひとつだとエピソードを交えて語ってくれました。
また、市民の立場を代表して、自動運転への期待や思い描いている理想像については、「今ある課題の解決、例えば交通弱者(自分で運転できない人)にとって、自動運転車がどう役立つのか。とくに高齢者の移動。駅から病院までの移動や、スーパーに買い物に行くときに使い勝手がいいことなどを考えてほしい」と。さらに、物流関連では大幅な効率化が期待できそうとコメント。子どもたちや高齢者がひとりでも安全かつ安心なして移動できる、そのような未来への期待が込められていると感じられました。
小田急電鉄株式会社の西村潤也氏からは、自動運転導入にかかるコストや、インフラ整備の必要性など、事業者の立場から見た課題が語られるなど、皆さんそれぞれの分野での取り組みや今後の指標など、自動運転の実現に向けた見解を示してくれました。
最後に清水和夫マスターが、「行政が前のめりになりすぎてもダメ。歩行者を含めた全ての人が交通参加者である意識をもつことが必要。行政は何をすべきか、自動車メーカーがどうすべきか、そして市民社会は自動運転への理解を深めて、意見を発していかなければならない」といった主旨のコメントでシンポジウムを締めくくりました。

また、併催イベントとして、MEGA WEBライドワンにて、自動運転試乗会も実施されました。用意された車両はハンドルやアクセルペダルなどがないNAVIYA ARMA(ナビヤアルマ)。2日間で300人以上が体験試乗しました。
