運転自動化技術とは機能とは。運転支援車と自動運転車の境界線はどこにあるのか。自動運転の基礎を解説します

1. 自動運転とは?

1-1. 自動運転の定義

自動運転は、すべての操作を運転者が担うレベル0から、加速・操舵・制動すべてをシステムが行い、運転者がまったく関与しないレベル5までに分かれます。運転の主体が運転者ではなくシステムに委ねられた状態を自動運転と理解できるでしょう。

1-2. 自動運転のレベル

レベル運転自動化技術を搭載した車両の概要運転操作の主体
レベル0加減速やステアリング操作、すべての操作をドライバーの判断で行います。運転者
レベル1アクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかを、部分的に自動化する技術を搭載した車両。運転者
レベル2アクセル・ブレーキ操作およびハンドル操作の両方を、部分的に自動化する技術を搭載した高度運転支援車両。
レベル3一定条件下で、すべての運転操作を自動化する技術を搭載した車両。ただし運転自動化システム作動中も、システムからの要請でドライバーはいつでも運転に戻れなければいけません。システムの作動が困難な場合は運転者
レベル4一定条件下で、すべての運転操作を自動化する技術を搭載した車両。システム
レベル5条件なしで、すべての運転操作を自動化する技術を搭載した車両。システム

※様々な資料を参考に、SIP cafeが2019年12月に製作したものです。

1-3. 今現在の日本のレベル

レベル1は衝突被害軽減ブレーキやオートクルーズコントロールのように加減速の支援、または車線維持のようにハンドル操作を支援するクルマを指します。
レベル2は加減速支援とハンドル操作の両方を支援するクルマになります。運転の責任はすべてドライバーにあることから、「運転支援車」と呼びます。現在市販されているクルマはレベル2です。
レベル3では特定の環境下において自動運転が可能。ただし、システムが自動運転を継続できないと判断した場合、ドライバーはすぐに運転に戻れる状態でなければいけません。レベル4になると、決められた条件下であれば、すべての運転操作をクルマに任せることができます。完全な自動運転レベル5は、センサー類やAIなどの技術のさらなる進化や、法整備、交通インフラ整備等、解決すべき課題が多く、実現までにはかなりの時間を要すると思われます。

1-4. 身近なサポカー

衝突被害軽減ブレーキを搭載したクルマに「セーフティ・サポートカー(サポカー)」、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進抑制装置等を搭載したクルマ(安全運転サポート車)に「セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」の愛称をつけました。新車時の衝突被害軽減ブレーキ(低速度域含む)装着率は84.6%(2018年)に達しています。(日本自動車工業会調べ)

「サポカー/サポカーSの技術」

● 衝突被害軽減ブレーキ(対車両・対歩行者)

車載のレーダーやカメラにより前方の車両や歩行者を検知し、衝突の可能性がある場合には、運転者に対して警報します。さらに衝突の可能性が高い場合には、自動でブレーキを作動します。

● ペダル踏み間違い時加速抑制装置

停止時や低速走行時に、車載のレーダー、カメラ、ソナーが前方や後方の壁や車両を検知している状態でアクセルを踏み込んだ場合には、エンジン出力を抑える等により、急加速を防止します。

● 車線逸脱警報

車載のカメラにより道路上の車線を検知し、車線からはみ出しそうになった場合やはみ出した場合には、運転者に対して警報します。

● 先進ライト
  • 自動切替型前照灯
    前方の先行車や対向車等を検知し、ハイビームとロービームを自動的に切り替えます。
  • 自動防眩型前照灯
    前方の先行車や対向車等を検知し、ハイビームの照射範囲のうち当該車両のエリアのみを部分的に減光します。
  • 配光可変型前照灯
    ハンドルや方向指示器などの運転者操作に応じ、水平方向の照射範囲を自動的に制御します。

サポカーSは衝突被害軽減ブレーキの機能に応じて、3つの区分があります。

ワイド衝突被害軽減ブレーキ(対歩行者)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置(マニュアル車は除く)、車線逸脱装置、先進ライト
ベーシック+衝突被害軽減ブレーキ(対車両)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置(マニュアル車は除く)
ベーシック低速衝突被害軽減ブレーキ(対車両)・作動速度域が30km/h以下のもの、ペダル踏み間違い時加速抑制装置(マニュアル車は除く)

2. 自動運転のある未来社会

2-1. 自動運転は移動を変える

自動運転は交通事故の削減、交通渋滞の減少、物流効率性の改善、環境等への影響軽減、運転者の負担軽減に大きく貢献する技術で、新たな交通サービスの創出も期待されます。無人自動走行車両による地域公共交通等サービス(貨客併用含む)や、 高速道路における無人自動走行トラックを活用したサービスなど、さまざまなニーズや地域に合わせたビジネスモデルを検討し、実現することで、生産性の高い社会を継続できるでしょう。シェアリングサービスなども活性化し、クルマは所有するから利用するものへと変わっていくかもしれません。自動運転実現によって、移動がもっと自由に、快適になることでしょう。

2-2. 自動運転は街を変える

近年、IoT(Internet of Things)、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータといった技術を活用した、新しい街づくりの取り組みも始まっています。自動運転の実装も検討されています。
サイバーとフィジカルを高度に融合したSociety 5.0の実現に向け、AI、IoTなどの新技術やデータを活用したスマートシティを街づくりの基本コンセプトとして位置付け、スマートシティの取り組みを官民連携で加速するため、自治体及び企業・研究機関、関係府省等を会員とする「スマートシティ官民連携プラットフォームサイト」も開設されました。
http://www.mlit.go.jp/scpf/index.html

2-3. 自動運転は暮らしを変える

少子高齢化社会を迎える今、移動手段の確保は大きな課題といえるでしょう。とくに地方地域ではクルマは必需品となっており、高齢になっても免許を返納すると交通手段を失ってしまう状況が多く見受けられます。公共交通機関もほとんどない地域では、自動運転バスなどの導入が実現すれば、移動の自由度は各段に高まると期待されています。

2-4. 自動運転は物流を変える

タクシーや物流業界などのドライバー不足解消に向けて、自動運転技術の導入が検討されています。トラックの隊列走行などの実証実験も始まっています。限定地域でのレベル3、レベル4が実現すれば、大幅な効率化とコスト削減が期待できます。

3. 自動運転の実現に向けた取り組み

3-1. SIP-adusによる活動

内閣府が中心となって、府省庁の枠や旧来の分野を超えたマネジメントによって、科学技術イノベーションを実現するために創設した国家プロジェクトが「SIP(戦略的イノベーション創造プログラムの略)」です。現在取り組んでいるプログラムは12テーマがあり、そのひとつが「自動運転」。「人々に笑顔をもたらす交通社会を目指して」を統一メッセージと定め、SIP-adusという略称がつけられました。adusはAutomated Driving for Universal Servicesのこと。簡単に言えば国家プロジェクトである自動運転とこれを使った社会を実現する“特命チーム”なのです。

この任務を遂行するために自動車関連産業、大学関係者、モータージャーナリスト、そして警察庁、総務省、経済産業省、国土交通省等の関係省庁という産学官が集結。「システム実用化ワーキンググループ(WG)」、「国際連携WG」、「サービス実装推進WG」を設置するとともに、システム実用化WGの下に、東京臨海部における実証実験の計画策定のための“東京臨海部実証実験タスクフォース(TF)を、サービス実装推進WGの下に交通環境情報の利活用等を検討するための交通環境情報構築TFを設置しています。 この一大プロジェクトのリーダーであるプログラムディレクター(PD)をトヨタ自動車先進技術開発カンパニーフェローである葛巻清吾氏が務めます。2014年から始まった本取り組みも現在第二期を迎え、自動運転技術を活用した物流・サービスの実用化に向け、開発を進めています。

3-2. 様々な実証実験

いよいよ本格的な実証実験が始まります。お台場周辺を自動走行車両が走行します。実は以前から自動運転の実証実験は始まっています。例えば2019年の2月から3月にかけて、大型路線バスでは国内初となる自動運転バスの公道実証実験を沖縄で実施。幹線道路を中心とした往復約18kmのルートを設定し、一般利用者の方にも試乗体験してもらいました。

2019年10月からは、東京臨海部周辺の一般道や首都高速道路で行われる実証実験は、公募によって決まった国内外の自動車メーカー、自動車部品メーカー、大学など計28機関が参加。車両は計100台程度になります。2019〜2022年度の期間実施予定です。

臨海副都心地域、羽田空港地域、羽田空港と臨海副都心などを結ぶ首都高速道路(一般道を含む)で、交通インフラから提供される信号情報や合流支援情報の仕組みを構築します。羽田空港地域では公共交通に係る自動運転システムを構築するために必要な磁気マーカーや、公共車両優先システムの整備などを行うなど、実証実験を通じて得られた課題の解決を行っていきます。

その他、地方部においては、自動運転による移動サービスや物流サービスの事業化に向けた自動運転の実証実験を行います。まずは現時点の技術レベルで可能な範囲で実験を展開していきます。 これまで、あまり目にすることがなかった自動運転技術を身近に感じる機会が増えることでしょう。

http://www.sip-adus.go.jp/fot/

3-3. 国際連携

日欧米において自動運転の開発・普及に向けた取り組みが活性化しています。そこで自動車大国日本が国際競争力を維持し続けるため、自動運転の標準化・基準化活動においてイニシアティブを発揮できるよう、積極的な情報発信を行っています。
SIP-adusワークショップの開催を通じ、国際的に共通する課題についての情報交流を先導。自動運転に関する重要国際会議として各国政府、主要プロジェクトのリーダーが多数参加し、最新情報の共有、重要課題への取り組みなど、専門的な議論を展開しています。自動運転実現に向けた国際連携活動の一環として定着してきました。2019年は11月12日から14日に開催されました。過去のワークショップ開催概要はコチラ。

http://www.sip-adus.go.jp/events/

3-4. 市民との対話

自動運転が交通社会にどのような恩恵をもたらすか、誰にどのようなメリットがあるのか、専門家による正確な情報提供の場を設け、自動運転に対する過信や不信を取り除き、正しい理解を深めることを目的に市民の皆さまと直接対話をさせていただく機会として「市民ダイアログ」を開催しています。自動運転の実用化に向けては、運転免許証の有無は関係ありません。すべての人が交通参加者であり、個々の置かれた環境によって移動に対する要望は多岐に渡るでしょう。そうした声を聞き、研究開発に活かしていくとともに、自動運転の安全性、利便性の向上への取り組みを知ってもらうことが、自動運転が受け入れられる未来の交通社会を作り出すうえで重要だと考えます。市民ダイアログの開催についてはSIP-adusのサイトでも告知・報告しています。

http://www.sip-adus.go.jp