
電動キックボードに関する道路交通法改正案が成立し、2022年4月27日に公布された。そもそも、足で蹴る必要がなく電動ですいすい進むのだから、キックボードと呼ぶこと自体が混乱を招いており、そろそろ電動立ち乗りスクータとでも名称を変えてもらいたいと思うのだが、警察庁の資料には特定小型原動機付自転車(電動キックボード等)とあるため、ここでも簡易的にこの名称を使うことにする。
電動キックボードは2つの種類に分けられる。
1.ナンバープレートを付け、原動機付自転車(50㏄バイク)と同様に扱われ、車道を走行し、ヘルメットと自賠責保険が義務となっているもの。
2.ナンバープレートはなく、公道を走ることができないもの、である。
3.そもそも、公道を走ることができないもの、である。
1.はすでに道交法として確立されており、2.はそもそも道交法の対象外。けれど、自転車と同じように、ヘルメットをかぶることなく、自転車道を走ったり、ときには歩道を走りたいという要望が寄せられたため、それに対応するべく、今回、特定原動機付自転車という新たなカテゴリーが設けられた。
これによると、運転できる人は、16歳以上。運転免許の必要性までは認められないが、標識の意味を理解して的確に操作できる年齢であることが求められている。また、通行場所は、車道、普通自転車専用通行帯、自転車道の通行が可能となり、これまでNGとされていた自転車道等の走行が可能になった。また、本来、歩行者の空間である歩道と路側帯を走るときは、最高速度を抑えた走行中であることを示す表示が求められる。表示方法に関しては、警察庁と並行して国交省でも検討がされており、このあと道路運送車両法で決められていく。

電動キックボードは、事故時に頭部損傷による重症化が懸念されるため、ヘルメットの着用義務を求める声も上がっていたが、同等の速度で走る自転車には13歳未満の子ども以外に着用義務がないため、今回も努力義務止まりになった。ただ、今回の改正では自転車も、すべての自転車利用者に対するヘルメット着用の努力義務も課せられた。
このように、電動キックボードに対する新たなルールを作るにあたり、一番のネックになったのは自転車の現状である。まさに無法状態になっている自転車に対し、それより速度が遅いときもある電動キックボードだけ厳しくできないというもどかしさだ。さらにもうひとつ、実証実験と称して行われている経産省を中心とした動きも電動キックボードの安全利用を阻害していると言わざるを得ない。新事業特例制度で新たな産業を後押しするのはいいけれど、都内等で行われている「ナンバープレート付きの電動キックボードでも、ヘルメットの着用は任意」という実験は、利用者、及び、周囲の交通参加者の混乱を招くばかりである。
新しい乗り物を活かすも殺すも、利用者の使い方次第。社会がどう受け入れ、使って行くかだ。自動運転実現というクルマ側から見ると、ややこしい乗り物が登場したと思うけれど、使う側としては使い勝手のいい便利な乗り物。気持ちよく社会で受け入れて育てていきたいものである。