はじめに

2022年3月4日に、道路交通法の改正案が国会に提出されました。

今回の改正案の主な内容は、3つです。

ひとつ目は、特定自動運行の許可制度の創設。ふたつ目は、電動キックボードや自動配送ロボットの交通方法。3つ目は、免許証と個人番号カードの一体化です。

このうち特定自動運行の許可制度の創設は、レベル4の自動運転の社会実装に向けた改正です。

この特定自動の許可制度とはどのような制度かを見ていきたいと思います。

背景

政府は、現在、2022年度目途で限定地域における遠隔監視のみ(レベル4)の無人自動運転移動サービスを実現し、2025年度目途に40カ所以上へ展開するという目標に向けた取り組みを進めています。

そのための法整備として、今回、道路交通法の改正案が国会に提出され、特定自動運行の許可制度の創設が提案されました。

特定自動運行の定義

まず、改正案では、レベル4の自動運転を「特定自動運行」と呼ぶこととして、定義規定が設けられています。

「特定自動運行」とは、自動運行装置を使用した運行のうち、整備不良車両になったとき又は使用条件を満たさなくなったときに、自動運行装置が直ちに自動的に安全な方法で自動車を停止させることができ、かつ、装置を操作する者がいないものです。

この特定自動運行は、「運転」という定義からは除くこととされています。

特定自動運行の許可制度

そして、改正案では、レベル4の自動運転移動サービスのため、「特定自動運行の許可制度」という新たな制度を創設することが提案されています。

この「特定自動運行の許可制度」とは、レベル4の自動運転移動サービスを行おうとする事業者が、特定自動運行計画を策定し、都道府県公安委員会に申請し、都道府県公安委員会が基準に従って審査するとともに、国土交通大臣や市町村の長にも意見を聴いたうえで、許可するという制度です。

特定自動運行実施者等の遵守事項

改正案では、「特定自動運行実施者」「特定自動運行主任者」「現場措置業務実施者」の遵守しなければならない事項も定められています。

「特定自動運行実施者」とは、レベル4の自動運転移動サービスを行うとする事業者のことです。「特定自動運行実施者」は、1.特定自動運行計画等を遵守し、2.「特定自動運行主任者」や「現場措置業務実施者」を指定・教育し、3.特定自動運行中は、特定自動運行主任者を遠隔又は車内に配置するとともに、特定自動運行中であることを表示しなければなりません。

「特定自動運行主任者」とは、レベル4の自動運行移動サービスの運行を担当する責任者のことです。「特定自動運行主任者」は、特定自動運行中は遠隔監視装置の作動状態を監視し、同装置が正常に作動していないことを認めたときは特定自動運行を終了させなければなりません。また、「特定自動運行主任者」は、特定自動運行が終了したときに、警察官の現場における指示等が行われている場合や、緊急自動車・消防用車両が接近するなどしている場合、特定自動運行車両が違法駐車になってしまっている場合は、適切な措置をしなければなりません。さらに、「特定自動運行主任者」は、交通事故の場合にも、警察官への報告等の適切な措置を行わなければなりません。

「現場措置業務実施者」とは、交通事故の場合に現場に急行し、道路における危険防止措置を行う者のことです。

これら「特定自動運行主任者」「現場措置業務実施者」を含め、レベル4の自動運行移動サービスに関わる人たちのことを「特定自動運行業務従事者」と呼びます。

レベル4の自動運転移動サービスを行う「特定自動運行実施者」は、「特定自動運行業務従事者」の教育を行わなければなりません。

適用範囲

特定自動運行の許可制度の適用範囲は、点線の枠で示したとおりです。

特定自動運行許可を受けることによって、道路交通法上の「運転者」がいない運行、つまり、レベル4が可能になります。

一方、運転者が遠隔にいて操作する場合や、運転者が車内にいて特別装置を使った操作をする場合は、現行制度上、警察署長による道路使用許可を受ける必要があり、この点は、引き続き同様の取り扱いとなります。

なお、運転者が車内にいて通常のハンドル・ブレーキを使った操作をする場合は、特段の手続きなく可能です。

おわりに

今回の道路交通法改正案が改正、施行されれば、レベル4の自動運転の社会実装に向けた第一歩が始まることになります。

自動運転という新しい技術のポテンシャルが十分発揮され、かつ安全性が十分確保されて社会実装されるためには、地域のニーズを意識し、それを踏まえて必要とされる移動サービスを想定し、その上で、技術はどのようにあるべきかを考えるとともに、ビジネスモデル構築、法制度整備、といった複数の観点から、あるべき方向性を検討していくことが大切であると考えます。