
先日お台場で開催された『SIP第2期自動運転 中間成果発表会』で、はじめて自動運転車のドライバーとして乗り込んだ。ラスベガスのCES 2019会場内駐車場での自動運転車に同乗させてもらう体験と、運転席で体験するのはまったく緊張感が違う。私が体験したのはスバルのアイサイトX搭載レヴォーグ。渋滞時のハンズオフアシスト、アクティブレーンチェンジアシスト、料金所前減速を実体験した。「大丈夫なのか?!」と不安を感じつつ恐る恐るステアリングから手を離したり、視線をずらしたりしても安定した自動走行のまま首都高を走り続ける。途中からは不安が感動に変わり「人間という不確定要素の塊が運転するよりは安心感があるものだな」などと技術の進化とメーカーの努力に感謝をしつつ自動運転体験を終了した。
体験後にSIP自動運転プログラムディレクター葛巻清吾さんや清水和夫さんらによるレクチャーを受けたのだがSIP自動運転プログラムの「協調と競争のバランスをとりつつ、自動車メーカー各社が独自ルートで山頂を目指している」という話が印象に残った。国際法に8カ月先立ち法律を変更しホンダ・レジェンドが世界初のレベル3自動運転車を発売できたり、当SIPプログラムでも各社が競争と協調のバランスをとりながら自動運転社会をリードすべく邁進されている結果には頭が下がるのだが、同時に不安もよぎった。自動車メーカー外のプレイヤーも参加しないといけないのではないか? と。なぜならば私の妄想も含み世界では様々なゲームチェンジが起きそうな分野だからである。

例えば中国深センに住む友人に聞くと中国では街中のレストランには自動配膳が当たり前にあるという。生活者に非常に身近な屋内での自動走行を制覇し、同時に車道での自動走行を制覇する(バイドゥがカリフォルニア州で完全自動運転車として認可されたニュースはインパクトがある)技術があると、屋内屋外車道を問わず人間に寄り添う自動運転車ができあがりそうだ。また、米国スタートアップのKodiak( https://kodiak.ai/ )はトラックなどの大型車の走行データを取り続けており大型車の自動運転 に役立つ技術を持っている。日本では大型車専門の自動運転ソフトウェアは見かけない。物流の要であるトラックの流通データは日本の大動脈ともいえるだろうがそのようなデータに対してはSIP自動運転プログラムのような「協調と競争」が行われているのだろうか? 知らぬまに日本の物流データが世界に流れていて日本が骨抜きにされるようなことが起きてしまうのではないか……。
首都高での自動運転体験が感動的なものであった分、ここに甘んじていてはいけない、外を見ると自動車メーカー以外のプレイヤーも山頂を目指して様々なルートで挑戦をし始めているように感じる。ぜひ「協調と競争」を自動運転プログラムの周縁でも活性化させ、社会全体で新たな山頂で生活できるような日本であってほしい。そのためにも様々なところでポジティブに「協調と競争」を行っていきたいものである。