2020年3月25~26日にかけて、SIP-adus(内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転)の中間成果発表会が開催された。2014年に科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクトであるSIPが始まったとき、6年後に開催されるはずだった東京オリパラが開催される2020年を一里塚として設定していた。東京オリパラは1年、延期になったものの、一里塚である2020年に、これまでの研究開発の成果を発表しようというものだ。

今回は、二日間の展示のほかに、25日に、「未来を変える自動運転ショーケース~産官学オールジャパン体制における自動運転の現在地~社会受容性シンポジウム/地域自動運転サミット」も開催された。SIP-adusは各省庁が一体となり技術的な研究開発を中心に活動しているのに対し、経産省と国交省ではそれとは別に、自動運転をいかに実用化させていくかに取り組んでいる。経産省・国交省が主催する社会受容性シンポジウムと、SIP-adusが主催する地域自動運転サミットを一体化し、研究開発~実用化まで一気に発信するのが狙いである。

社会受容性シンポジウムでは、第一生命経済研究所の主席研究員である宮木由貴子氏による消費者意識調査からみるモビリティ実態と自動運転の可能性や、日本自動車工業会の横山利夫氏によるオーナーカーの自動運転の安全性評価の取り組みなどの講演のほか、事業者によるさまざまな取り組みが紹介された。

さらにこの日は福井県永平寺町で、レベル3の認可を受けた遠隔型自動運転システムによる無人自動運転移動サービスの出発式典が行われ、東京にある会場と永平寺町の模様を中継でつないで紹介された。

また、地域自動運転サミットでは、実際に自動運転による地域移動サービスの実証実験などを行っている、秋田県上小阿仁村、福井県永平寺町、滋賀県東近江市、島根県飯南町、沖縄県北谷町の現場の担当者がオンラインで集まり、最前線の課題を中心に意見を交わし状況を交換した。

実証実験が行われると各報道では華々しい言葉が並ぶけれど、現場に携わる人たちは運用に関するさまざまな課題に直面している。どうすれば継続的に運営ができるか、集客はどのようにしていくか、車両のメンテナンスはどうするかといった問題から、寒さ暑さはどうするか、移動以外に活用できないかなど、さまざまな意見や困りごとがある。今回のサミットでは、個々に悩むのではなく、各地をつなぎ悩みを共有しつつ、一緒によりよいものにしていこうという意図も含まれている。

一方、サミットでは事業者の代表も集まってパネルディスカッションが行われた。研究開発や実証実験を重ねる彼らも、お互いに顔を合わすような横つながりの機会はほとんどなく、これを機会に、交流してもらい切磋琢磨を狙ったものである。

SIPは2022年度まで予定されている。SIP-adusも自動運転の技術開発と同時に、今後はさらに社会受容性を上げる活動を推進していく予定である。