
羽田空港のある街として知られる東京大田区。摘んだ秋の草花を手にご夫婦はいつもの散歩のついでに、2020年10月に9月18日より本格稼働し始めた羽田空港を一望できる最先端テクノロジー施設HANEDA INNOVATION CITY(略称:HICity・ハイシティ)まで足を延ばして、自動運転バスに乗ってみることにしました。
ハイシティのピンクや水色のロゴの色にカラーリングされたフランス・ナビヤ社の自動運転バスの車体は、飛び乗ってみたいと思う気持ちを誘います。この自動運転バスはこの施設の一機能として常時運行をしています。
これまでの自動運転バスの走行は実証実験が多く、ハイシティのように常時運行をするのは国内初の取り組みです。最先端テクノロジー施設を見学に来る来街者が乗車するのではなく、大田区に住むご近所さんがご近所さんを呼び、住民の試乗が増えているのだそうです。
ボードリーの運行システムを用い、日本交通が運行
この自動運転バスの運行は日本交通が担い、ボードリーの運行システムが用いられています。ボードリーが提供しようとしている運行システムは、自動運転の走行を限りなく人が介在しなくてもよいように自動化されているのが特徴です。何か異常があった時だけ対応するような仕組みになっており、日本交通の運行管理者への負担が少ないのだといいます。
ハイシティは大田区の未来の大実験場
ハイシティは羽田空空港第3ターミナルから1駅の天空橋に直結しています。羽田空港滑走路跡地の5.9ヘクタールの広大な土地に建設され、延床面積は約13万平方メートルの未来の大実験場としての役割を担うスマートシティです。
テーマは「先端」と「文化」です。単なる巨大な商業施設を作るのではなく、先端モビリティセンター、体験型商業施設、足湯スカイデッキ、アートアンドテクノロジーセンター(2022年開業)、研究開発拠点(2022年開業)、先端医療センター(2022年開業)の施設が計画されています。
先端技術を持つ企業を呼び込み、世代交代の進まない東京大田区の中小企業を元気にするため、50年の定期借地で募集が行われました。鹿島建設を代表に東日本旅客鉄道、大和ハウス、東京モノレール、京浜急行、野村不動産パートナーズ、日本空港ビルディング、富士フイルム、空港施設の9社が出資してできた羽田みらい開発がハイシティの開発を行っています。
自動運転バスはエレベーターなどといった施設機能のひとつとしてハイシティでは捉えられてるようです。
最先端テクノロジーの活用をまずハイシティ内で行って、他の大田区での利用を検討しています。
鹿島建設のデジタルツイン、自動運転をアシスト
モビリティ分野で自動運転バス以外に注目されたことは、リアル空間の情報をIoTなどで集めて、サイバー空間でリアル空間を再現する”デジタルツイン”です。
ハイシティのデジタルツインは、鹿島建設が建物を建てる際に使っているシステムを施設運用に使っていこいというものです。建物を施工する際に、図面を3Dでデジタル化したり、作業員の位置とバイタルやクレーンの稼働状況をビーコンやスマートフォンを使ったりしてリアルタイムで管理するリアルタイム現場管理システムを施設運用に使っていこうとしています。これまでは建物を建てる際に使ったデジタルシステムは、建物が完成するまでしか使われていなかったようで、運用にも使えそうなビーコンは撤去されていたようです。
位置情報イメージ(鹿島建設プレスリリースより) 空間情報データ連携基盤「3D K-Field」の表示画面
このサイバー空間でリアル空間を再現するデジタルツインを用いることができれば、自動運転バスの走行やロボットの活用もスムーズに行えるようになるといいます。デジタルツインは、今は限られた施設内での活用ですが、実績を積みビジネスを構築させて、ゆくゆくは大田区の他地域での活用も目指しています。
デジタルツインをまちづくりに使っていこうとする取り組みは、東京の大丸有や豊洲などのスマートシティでもみられます。デジタルツインと自動運転バスやロボットなどを用いたまちづくりが、大田区全域や他地域でも広がり、人々の暮らしに馴染んでいくとよいなと感じました。