法律以外の専門分野の方から「自動運転に関わってくる法律は、たくさんあるから、訳がわからない。」とよく言われます。
そこで今回は、自動運転に関わってくる法律を整理してみたいと思います。
大枠を理解しておけば、法律問題に触れたとき、「今はあそこの問題の話題だな。」ということがすぐにわかるようになると思います。
自動車に関わる法律は、大きく2つに分けられます。
①事前に事故を防ぐための「規制法規」と、②事故が起きたときに事後に責任を明らかにするための「責任に関する法律」です。
①「規制法規」には、自動車の技術に関する法律である「道路運送車両法」と、運転者の義務等に関する法律である「道路交通法」があります。道路運送車両法が「道具である自動車」を規制し、道路交通法が「使い手である運転者」を規制しています。そうすることで、2つの法律が両輪となって道路交通の安全を保ち、事故を防ごうとしています。
しかし、残念ながら、それでも事故は起きてしまいます。そこで、事故が起きたときに誰がどのような責任を負うのかを決めておくため、責任に関する法律が必要となってきます。
②「責任に関する法律」には、「刑事責任」に関する法律と「民事責任」に関する法律があります。刑事責任は、事故を起こした者に国がペナルティを与える「処罰」の問題です。民事責任は、事故の被害者の損害を補填する「賠償」の問題です。
刑事責任に関しては、運転者のミスが原因の事故の場合は、「自動車運転死傷行為等処罰法」で運転者が処罰されます。ただ、今後、自動運転車が増えていくと、車両の欠陥が原因の事故が発生する可能性があります。その場合は、メーカー関係者等が「刑法」の業務上過失致死傷罪で処罰される可能性があります。
民事責任に関しては、事故の相手方の死傷といった人的な損害については、「自動車損害賠償保障法」が適用されます。これに対し、物的な損害等については,「民法」が適用されます。また、今後、自動運転車が増えていくと、車両の欠陥が原因の事故が発生する可能性があります。その場合は、メーカーが「製造物責任法」によって責任を負う可能性があります。 自動運転の法律問題は多岐にわたっていますが、このような法制度の枠組みのどの部分の議論なのかを意識すると、議論のポイントがわかりやすくなるのではないかと思います。
