皆さんこんにちは。モータージャーナリストの石井昌道です。新型の自動車に試乗したレビューを雑誌やウェブといったメディアに寄稿するのが主な仕事です。もともとクルマが大好きだったので学生の頃に自動車雑誌の編集部でアルバイトを始め、そのまま就職。しばらく務めた後に独立してフリーランスとして活動を始めて現在に至ります。

カッコがよくて速い、あるいは運転して楽しい自動車が好きで、仕事もそういった趣味の世界が大半を占めていたのですが、少し考えを改めなければと思わされたきっかけが1997年にありました。京都議定書です。

それまでは好きなことを仕事にできて、楽しくノンキに日々を過ごしていたのですが、何やら背筋がスーッと冷たくなっていくような感覚を覚えたのです。

自動車のCO2排出量は走行時だけでも日本全体の15%前後と、かなり大きな割合を占めています。移動など必要に応じて自動車を利用するならまだしも、楽しいから趣味で走らせるなんてことは社会悪となりかねません。自分が大好きで、仕事にもさせてもらった世界が危機にさらされるかもしれない、このままでは自動車が悪者になってしまうと考え始めたのです。それからは、自動車の燃費、ハイブリッドカーや電気自動車といった環境対応技術などに興味をもつようになりました。CO2排出量を抑えるため、もう自動車に乗らないという極端な結論を出す前に、最新の技術が盛り込まれた自動車を選んで地球温暖化防止を図る道もあるのではないか。

あるいは、運転の仕方によって燃費は変化するものなので、ドライバー全体が低燃費な運転をすれば相当のCO2を減らせるのではないかと考え始めました。

エコドライブのインストラクターを務めさせていただき、それなりに効果もありました。当初は危機感から背中を押されて始めたのですが、じつはやってみると大いに興味を惹かれます。

たとえば、以前はどうやったら自動車を誰よりも速く走らせることができるだろうか? と考えることが多かったのですが、それはエコドライブと根っこでは繋がっています。同じ燃料の量で誰よりも遠くまで走れることを考えて燃費を改善することも、速く走らせることも、いかにエネルギーを効率良く使えるかということですからね。

しかしながら、パリ協定にコミットしていくにはもっとドラスティックに世の中が変わる必要もありそうです。
環境問題とともに、安全問題も自動車が社会に対して果たさなければならない責任です。

日本の交通事故死者数は1970年の1万6765人をピークに、2018年は3532人まで減少しました。交通安全教育や取り締まり強化、そして自動車の安全技術の進化によるところが多いのですが、近年では減少率は下がってきています。そこで期待されるのが自動運転および自動運転技術です。自動運転は交通事故を最小化するポテンシャルを持っているのは間違いありませんが、社会受容性を高めることが肝要です。

SIPの推進委員を務めることになり、技術の正しいあり方を考え、世の中へ正しい情報が伝わるよう尽力していく所存です。

今後ともよろしくお願いします。