皆さまはじめまして、ライターの北条かやと申します。普段は文化系の雑誌や、経営者インタビュー、民間企業のDXに関する記事などを書いています。もともと新しい分野を積極的に取材するのが好きで、このたびSIP cafeでも「次世代モビリティ」について取材させていただくことになりました。

100年に一度の変革期を迎えている自動車業界。自動運転やスマートシティ、Society5.0を支えるIoTの活用など、社会全体の新しいうねりをどんどん吸収していこうと思います。

“若者のクルマ離れ”が顕著になったミレニアル世代

少し、世代の話をさせてください。1986年生まれの私は、マーケティング的なカテゴリでいうと「ミレニアル世代」に当たります。この世代は「クルマ離れ」が顕著になりはじめた世代で、私たちが成人した2006年頃にはすでに「若者がクルマを買わなくなった」と言われていたように記憶しています。

実際は地方と都市部でも違いはあるので一概には言えませんが、2009年に話題を集めた『「嫌消費」世代の研究-経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち』(松田久一著/東洋経済新報社刊)のキャッチコピーは「クルマ買うなんてバカじゃないの?」。バブル崩壊後の長い不況を経て、若者の収入は著しく低下しました。デートにクルマが必須だった時代は遠い過去のものとなり、クルマばかりでなくブランド物や海外旅行などに対しても、多くの若者が魅力を感じなくなったといわれています。

新成人の4割以上が運転免許なし、クルマは「購入費用が負担」

恋愛に消極的な若者を指す「草食系男子」という言葉が流行したのも、私たちミレニアル世代が20代前半だった2009年でした。デートでクルマを使わないどころか、恋愛すら億劫だ。そんな雰囲気も、一部にはあったように思います。あれから10年以上たちますが、若者が肉食化したという話はいまだに聞きません。ソニー損保が毎年行っている「新成人のカーライフ調査」によれば、2020年の新成人のうち運転免許を持っている人の割合は56.4%、マイカー所有率は14.8%と相変わらず低いようです。自分のクルマを持ちたいと思わない理由のトップは、「購入費用を負担に感じる」。

もはや若者にとってクルマはぜいたくな趣味のひとつで、ロマンを感じる対象ではなくなったのだと思います。自分の記憶をたどっても、若い頃から「こんなクルマが欲しい」「デートでこんなクルマに乗りたい」などと考えたことは一度もなく、同世代の友人を見てもクルマはそもそも必要ないか、子育てに必要な軽自動車やコンパクトカーで十分という考えが多数派です。

デジタルネイティブ世代はモビリティの変化を歓迎する

一方で私たちは、小学生の頃にWindows95が発売され、中学生でケータイを持ち、大学生の頃にTwitterやフェイスブックなどのSNSが世界中で流行した「デジタルネイティブ世代」でもあります。何でもデータ化し、ウェブで検索するのが当たり前の世代。そんなデジタルネイティブな私たちだからこそ、自動車業界が迎えている「100年に一度の大変革期」にもすんなりと適応できるような気がするのです。

2017年の東京モーターショーで、メルセデス・ベンツのCASE戦略が発表されました

2016年にメルセデス・ベンツが発表した“CASE”=「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリングとサービス)」「Electric(電動化)」。いずれも現代の30代以下のミレニアル世代や、その下の“Z世代”といわれる25歳以下の若者たちにとって、それほど理解し難いものではありません。若者たちは、スピードが出るスポーツカーや、爆音を響かせるガソリンエンジンへのあこがれももっていませんし、EVや水素自動車によるカーシェアが主流になってもそれほど驚かないでしょう。IoTで自動車業界、もっと広くいえばモビリティ全体が生まれ変わることを、若者たちはどちらかといえば歓迎するのではないでしょうか。

データがあふれる未来の「モビリティ」はどう変わる

KYOTO楽Mobiコンテストで、歩くまち・京都賞(京都市長賞 アプリ開発部門) を受賞した松岡輝樹氏(右)

11月7日、京都の観光・交通課題をデータで解決するアプリコンテスト『KYOTO楽Mobiコンテスト』を取材しました。特別に公開された交通データを使って、一般の学生や市民がアプリを開発、提案するイベントです。最優秀賞を受賞した松岡輝樹氏は、趣味でプログラミングを手掛ける“日曜プログラマ”。市民目線で見つけた京都の課題を、オープンデータを使ってわかりやすいアプリに仕上げました。

これからは松岡氏のように、市民がみずからデータを活用して新しい価値を生み出す時代が来るでしょう。そうなればモビリティにとっても、次の未来が開けてくるような気がします。今は多くの民間企業や官公庁が、保有するデータのほとんどをオープン化していませんが、私たちのように、情報社会へ慣れ親しんだ世代が40代、50代になる頃には、データの公開とシェアが今よりもっと進んでいるでしょう。転換期を迎えた自動車業界にも、次なるイノベーションが起きるに違いありません。そんな未来に、どんな移動の形が待っているのか、私は今から楽しみで仕方がないのです。