
2019年に改正された道路交通法と道路運送車両法の自動運転に関する規定が2020年4月1日に施行されました。
今回は、道路交通法の改正のうち自動運転に関するポイントを、網羅的に、そして、ギュッと凝縮して解説したいと思います。
ポイントは3つです。
ポイント1:「自動運行装置」「運転」の定義
ひとつめのポイントは、「自動運行装置」と「運転」というふたつの言葉を定義する規定が整備されたことです。
これまでは「自動運行装置」、つまり自動運転システムについては、道路交通法にも道路運送車両法にもこれを定義する規定はありませんでした。今回の改正では、新たに道路交通法と道路運送車両法に「自動運行装置」という言葉を定義する規定が設けられました。これによって、道路交通法がレベル3の自動運転車の使用を認めることが明らかにされました。
また、これまでは「運転」という言葉は道路交通法で「道路において、車両または路面電車(以下「車両等」という)を本来の用い方に従って用いること」と定義されていました。
今回の改正では、この定義に「自動運行装置を使用する場合を含む」という言葉が付け加えられました。
これによって、レベル3の自動運転車を使用する人も「運転者」として扱われ、道路交通法で決められている「運転者」の義務を果たさなければならないということが明らかにされました。
ポイント2:運転者の義務
ふたつめのポイントは、自動運行装置を使用する運転者の義務に関するふたつの規定が整備されたことです。
まず、今回の改正では、運転者は使用条件を満たさない場合は、自動運行装置を使用して運転してはならないという義務規定が設けられました。ここでいう使用条件とは、国土交通大臣が付する条件です。
次に、携帯電話等や画像に関する義務規定の適用除外を認めました。
これまでは、運転者は自動車が動いている間は、携帯電話等を使用したり画像を見たりすることは一律禁止されていました。
今回の改正では、自動運行装置の作動中は3つの条件(①整備不良車両に当たらないこと ②使用要件を満たしていること ③運転者が①または②に該当しなくなった場合に直ちに認知・操作できる状態にあること)を満たす場合に限って、携帯電話等の使用と画像を見ることが認められました。
ここで注意すべきは、自動運行装置の作動中であればどのような場合でも携帯電話等を使用したり画像を見たりすることが許されることになったわけではなく、あくまで3つの条件を満たした場合に限って許されることになったという点です。
ポイント3:データの記録等
3つめのポイントは、データの記録等に関する規定が整備されたことです。
まず、自動運行装置を自動車の使用者等には「作動状態記録装置」による「記録」と、データの「保存」が義務付けられました。
次に、警察官の権限に関する規定が整備されました。
これまでは、警察官は整備不良車両と思われる自動車を見つけたときは、その自動車を停止させて車検証等の提示を求め、装置の検査をすることができました。
今回の改正ではこれに加えて、警察官は、「作動状態記録装置」に記録されたデータの提示も要求できることになりました。
さらに、警察官がデータの分析をできるよう、警察官がデータ認識のために必要な措置を自動車メーカー等に対して要求できるという規定も設けられました。
道路交通の運転のために
以上のような改正によって、レベル3の自動運転車の社会実装に向けた法的整備がなされ、市場化が現実となりつつあります。
今後は、過信による事故をいかに防ぐかが大きな課題となると思われますので、運転者の義務等に関する啓発を様々な場面で行っていくことが重要であると考えます。