
車両の機能とドライバーの役割が複雑になる
以前のクルマの操作は、とてもシンプルでした。
アクセルを踏めばスピードが出て、ブレーキを踏めば止まって、ハンドルを回せば曲がる。その操作は、どのクルマにも共通するわかりやすいものでした。
そのため、友人のクルマやレンタカーを運転する際、そのクルマの機能についてわざわざ改めて確認しなくても運転に支障はありませんでした。
しかし、現在のクルマは様々な機能が搭載され、複雑になっています。そして、今後はますます複雑になっていきます。
クルマの機能は自動運転のレベルによって異なり、クルマの機能に応じて人が果たすべき役割も異なってきます。
しかも、同じレベルのクルマであっても型式によって自動運行装置の使用条件が異なることも想定されます。
そのため、ドライバーはクルマを安全に運転するために、自分が運転するクルマについてその機能と限界を正確に把握し、自身が果たすべき役割を十分理解した上で運転することが不可欠になってきます。
メーカー・販売店がドライバーにきちんと説明することが要求される
このような車両の機能の複雑化に伴い、自動車メーカーや販売店がドライバーに車両の機能をきちんと説明することの重要性も高まります。
製造物の欠陥が原因で損害が生じた場合、その製造物を作ったメーカーは、「製造物責任」を問われます。
「欠陥」には、①設計上の欠陥 ②製造上の欠陥 ③指示・警告上の欠陥があります。
「指示・警告上の欠陥」とは,設計上も製造上も問題はなく、正しい使い方をすれば安全な製品であるけれど、間違った使い方をすれば危険が生じる製品である場合、そのことをメーカーがユーザーにきちんと警告する必要があり、それを怠った場合は「指示・警告上の欠陥」があったとして法的責任を問われる可能性があるということです。
以前のクルマはとてもシンプルでしたから、「指示・警告」は、さほど重要ではなかったかもしれません。
しかし、車両の機能や人の役割が複雑化していくことに伴い、「指示・警告」が適切になされることが非常に重要になってきます。
そのため、メーカー・販売店がユーザーに対し、車両の機能をその限界も含め、わかりやすく正確に伝えていくことが大切になっていきます。
運転免許の取得・更新の際の教育も大切になる
この点をメーカー・販売店の努力だけに頼っていたのでは、道路交通の安全は確保できません。
レンタカーやカーシェアの利用が増え、普段から乗り慣れた自分所有のクルマではなく、初めて運転する他人所有の車を運転する機会が増えています。
そのため、運転免許の取得や更新の段階で、すべてのドライバーに対し、自動運転のレベルや型式によりクルマの機能とドライバーの役割が異なることをわかりやすく正確に伝えていくことが大切です。
そして、今後、何より大切なことは、ドライバー自身が自分が運転するクルマについて、その機能と限界を正確に把握し、ドライバーの役割を十分理解した上で運転することが必要であるという意識を持つことであり、それなしには道路交通の安全は確保できないと考えます。