官民ITSロードマップ2019に記載されている2025年完全自動運転を見据えた市場化・サービス実現のシナリオによると、2020年に限定地域での無人自動運転移動サービス(レベル4)の実現とある。この目標に向けて、各地では過疎地域の移動の足などを確保するべく、実証実験が繰り返されている。

人手不足でタクシーやバスのドライバーを確保することが難しい過疎地において、システムがドライバー代わりに運転を担う“無人”は価値がある。運行する車線や区域、日中で明るいなど運行できる条件が整っていれば、自律型、もしくは遠隔型で走行できる技術は整いはじめている。これなら、車内に人がいる必要はない。
ただ、道路交通法的には、クリアすべき問題がある。交通事故時の救護義務だ。事故が起きてけが人がいるときは、ドライバーには救護し、まわりのクルマに事故発生を伝えるなどの義務があるのだ。無人の場合、それはどうなるのか。
遠隔操作の場合、周囲のカメラでけが人を認識できるため遠隔操作者が119番通報すればいいという声がある。
しかし、救急車が到着するまでのあいだ、けが人は路面で倒れたままでいいのか。反対車線に横たわっている場合、二次事故だって起きかねないではないか。
さらに、車内の乗客がけがをしたときの対応はどうなるのか。乗客同士が助け合えばいいというわけにはいかない。乗客がひとりだったらどうにもならない。それに、道路運送法の旅客自動車運送事業運輸規則第19条によると、運送事業者は、旅客が死亡・負傷したときは応急手当その他の必要な措置を講ずること、とある(一部抜粋)。
車両の内外ともに、けが人に対する救護等はドライバーを含む運送事業者に義務があるのである。
救護に時間がかかれば、致死率が上がることは今さら言うまでもない。バイスタンダー(けが人のそばにいる人)がどう動くかで、救命率を大きく左右する。この課題を“無人自動運転サービス”はどうクリアしていくのか。議論を重ねていく必要がある。