高齢者が起こす事故件数が増加していることを受けて行われた「高齢運転者交通事故防止対策に関する調査研究分科会」の中間報告書が2019年12月19日、警察庁から発表になった。最終報告は年が明けた3月に行われる。

中間報告で示されたポイントは2つ。

ひとつは、免許更新時に行われる高齢者講習で、特定の違反歴のある人に対して実技試験を行うというもの。現在も実車講習は行っているものの、あくまでも受けるだけ。しかし、ある特定の違反をする人はその後事故を起こす可能性が高い。さらに、認知機能だけでなく身体的機能の低下もふまえ、実技試験を採用する方向で検討が進んでいる。

ふたつめは、限定免許の導入である。公共交通機関のない地域では免許を返納すれば移動が非常に困難になる。普通免許の更新はできなくても、小型で速度制限があり加害性が低い車両や、サポカーのように衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全技術を搭載した車両に限り乗れる限定免許の導入を検討していることが示された。

しかし残念ながら、小型のクルマは事故のときに車内の人を守りにくい。また、サポカーに搭載されている先進安全技術では高齢者が起こしやすい出会いがしらの事故や車線逸脱による事故への効果は期待できない。

衝突被害軽減ブレーキは期待が高まっているものの、この機能はドライバーの意思を優先するためドライバーがアクセルを踏み込めば減速しない。池袋や福岡で起きた「アクセルを強く踏み続けた状態」の事故は防げないのだ。ペダル踏み間違い時加速抑制装置(いわゆるコンビニに突っ込まないようにする)も、停車~低速でのみ作動するため、池袋や福岡での事故では出番がない。さらに、車線逸脱警報は、時速60km以上で作動するものがほとんど。一般道では使えないのだ。

警察庁も、現在のサポカー技術では高齢者事故が解決できないことは承知しており、今後、さらなる機能の向上や新技術の開発を期待している。現時点で限定免許を検討してはいるものの、どういうものを導入して運用するか、まだ結論は出ていない。

現在、高齢者講習を受ける人は年間250万人で、今後はもっと増えていく。安全な移動の確保のためにも、自動運転技術&運転支援技術のさらなる開発と普及が待たれるところである。